061-080
裏に隠されたかなしみと妬みが微かに残る
かなしみも愛情も湧かなかった
そのまま水に溶けて消えてしまうように
8オクターブ上から流れ落ちる音を拾い集めて
狂っているのは世界なんかじゃなく、(きっと僕の方だ)
その言葉だけはやさしいから
痛み、鉄のような苦味、眩み、暗闇
ト長調のパステルカラーの光景
それは永遠の子守歌にも似て
裏道の自販機の前で待ち合わせしよう
グラスに残ったのは溶けかけの氷
別れの後の余韻が少し淋しくて
胸の奥まで引き裂くようなフォルティッシシモ
にわか雨の向こうに虹を待つ
零れ落ちていってしまわぬように
カーテンの隙間から差し込む朝明の光は眩しく
毎日が昨日のようだったのに
切なさに懐かしい声が嬉しくて
きっと立ち止まったままで
脳裏に浮かぶ楽譜を指先で辿る
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