all
冷たい手が頬に触れて、思わず涙が溢れた
世界は決して美しくはないけれど、僕は恨んだことはない
奇蹟は伸ばした手の指先より少しだけ先に
水に映る空を浮かぶ花弁ごと掬って
出逢いと別れは同時に起こる
笑うあなたにどうして泣けと云えるだろう
鏡の欠片にも光が反射するように
世界中のどんな言葉を用いようとも
コバルトブルーに溶けてゆく飛行機雲を見上げて
蜜柑色に染まったグラウンドから影をおくる
散撒いた絵の具は世界の崩壊を意味した
私は貴方が思う程優しい人間じゃない
その優しさが私を傷つけるということを(貴方は知らない)
モノクロームの記憶を色鉛筆で彩ったなら
突きつけられた絶望が希望に思えた
期待しても無駄だと知っていたはずなのに
最後に見た朝焼けの色が瞼の裏に焼きついて
星座をつくる星たちは宇宙では孤独なのだと
君のラブソングが別れの言葉に聴こえた
明日があると誰が約束したのだろう
坂道の途中で振り向いたなら
プラットホームを吹き抜ける風に涙は渇いて
廃墟に青い空は哀しいほど輝く
風に攫われた言葉を繋ぎ合わせて
振り撒かれたカラフルな金平糖
映画のワンシーンのような幕切れ
悲しいのはあなたがいないからじゃない
窓から飛ばした紙ヒコーキの行方
一枚の冩眞を握り締めたまま
雨の音を聴きながら眼を閉じる
優しさじゃなく同情でも良かった(振り向いてくれるなら)
隙間から差し込む陽射しに透かす
愛していると云えない僕は、(臆病者ですか)
何処までも透明な涙を掬って、飲み干して(私を救って)
濡れたアスファルトに寝そべって見上げた空に
千切れた蝶の羽に欲しかった綺麗さは無く
たとえそれが偽物の愛でも、私は構わない
地平線は朝と夜の境に消えていった
いつか、虹の終わる場所へ
ニュルンベルクの鐘の音が鳴る前に
あなたは綺麗な手で華麗に人を殺める
塵を漁る鴉はまるで、愛に餓えた人のような
あなたは私の一番すきなひとに似てる(からすきよ)
小指に巻き付いた赤い糸の先を断ち切って
貴方を繋ぎ止めておくための条件反射
水だけの水槽に、私まで透き通ってくるよう
薄過ぎるテキーラが舌に絡みついて残った
まるでさよならを言うような響きで
それでも奇蹟は起きない
それで満足するのなら何度でも云うわ(あいしてると)
曖昧な過去をナイフで切り裂いて
歪んだ未来を拳銃で撃ち抜いて
この左胸を割れたグラスの破片で貫いて
零れ落ちた星屑はもう輝いていなかった
熟し過ぎた果実は腐敗してゆくだけ
傾けたワイングラス、水に浮かべた太陽が零れてゆく
だけど、悲しくなんかなかった
I have few love, you know.
降り出した俄雨に、虹が架かるかしら、と貴女は
嫌いな訳じゃない、(好きな訳でもない)
裏に隠されたかなしみと妬みが微かに残る
かなしみも愛情も湧かなかった
そのまま水に溶けて消えてしまうように
8オクターブ上から流れ落ちる音を拾い集めて
狂っているのは世界なんかじゃなく、(きっと僕の方だ)
その言葉だけはやさしいから
痛み、鉄のような苦味、眩み、暗闇
ト長調のパステルカラーの光景
それは永遠の子守歌にも似て
裏道の自販機の前で待ち合わせしよう
グラスに残ったのは溶けかけの氷
別れの後の余韻が少し淋しくて
胸の奥まで引き裂くようなフォルティッシシモ
にわか雨の向こうに虹を待つ
零れ落ちていってしまわぬように
カーテンの隙間から差し込む朝明の光は眩しく
毎日が昨日のようだったのに
切なさに懐かしい声が嬉しくて
きっと立ち止まったままで
脳裏に浮かぶ楽譜を指先で辿る
すべてが憧れで出来ていたのなら
イアーゴは夢を見るか
忘れ去られた約束は何処へ行く
儚げに映るその背中を、思わず抱き締めたくなった
冷たすぎる溶けない氷のように(触れる瞬間は焼けるように熱いけれど)
レースカーテンの透ける青
ニライカナイで立ち止まって
その一言にどれだけの覚悟が必要なのだろう
you don't need to know
空の彼方、奇蹟の向こう、永遠のその先
(c) valse All Rights Reserved.